特別な石・・・・カイヤナイトのリング(1)

特別な石・・・・カイヤナイトのリング(1)
今からお話することは、あるお客様との交流の中で感じたことです。

天然石に関する、とても不思議な経験でした。
天然石はただ美しいだけではありません。

そこに大変魅力も感じるのですが、こんなこと、人には言ってはいけないことだ、自分の胸にしまっておくべきことだと考えていました。

けれども、そのお客様との出会いのおかげで、
「世の中、そういうこともあるのかもしれない」と思えました。
そして、自分の胸にだけしまっておくのはもったいないようなお話だと思えました。

もちろん、そのお客様の了解を取った上で、書いています。
店長日記に書くこと、快く了承していただき感謝しています。


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天然石には同じ種類、同じ形のものがたくさんあります。
なのに、なぜか一粒だけ、気になる石や、自分が気に入ってしまい手放せない石というのがあります。

たぶん、人との出会いと同様、それは、自分にとって縁のある石、波動の合う石なのだと思います。

写真のカイヤナイトのリングは、私にとって、そんな石でした。

写真をごらんになっておわかりのかたもいらっしゃるかもしれませんが、この石が私には、今までで一番美しく撮れた石です。
いつも写真を撮るのはとても苦労していて、いつもひとつの石につき、最低でも百枚くらいは写真を撮るのですが、この石はすんなり綺麗に写ってくれました。

この写真は、プロのカメラマンのかたにも「凄く綺麗」と褒めていただいた唯一の写真です。

カイヤナイトといっても、卸から買うときは、同じ種類・同じクオリティ・同じ形のカイヤナイトを大量に買います。
もちろん、天然石には、二つとして同じものはないのですが、この写真のカイヤナイトは、特にお気に入りの石でした。

うまく言えませんが、この石の持つ雰囲気やたたずまいに魅かれるのです。
他にも、同じ形、同じ種類のカイヤナイトがたくさんあるのにも関わらず、この石だけが、なぜか、自分にとって違うのです。

そういうわけで、このカイヤナイトだけは、売らずにずっと手もとに置いていました。

カイヤナイトのリングの注文が入ると、新しい石、新しい台座でひとつひとつ心をこめて新しいリングを作ってからお客様にお送りしていました。

でも、その後、私の身辺に大きな変化があり、プライベートで大変忙殺される時期がありました。
変化自体は悪いことではなく、自分にとって必要な変化のときが来ただけなのですが、
大変な時期で、とにかく用事に追いまくられていました。

そんなときに、あるお客様から、カイヤナイトのリングの注文が入りました。
忙しすぎて新しい石でリングを作る暇がありませんでしたので、仕方なく、ずっと気に入っていたこのカイヤナイトを送りました。
惜しい気がしましたが、新しいリングを作る気力さえもなかったので、仕方ありませんでした。


そのカイヤナイトをご注文のお客様に送ってしばらくして、そのお客様からご連絡がありました。

「石がカタカタ動くので、しっかり留めて欲しいのですが」

もちろん発送前にチェックは入念に行いますし、自分の感覚としては、発送時にそのように動くとは感じませんでした。
でも「もしカタカタ動くならちゃんと接着剤で留めなきゃいけないかな・・」
と思いました。
送り返してもらって、爪を開けて固定しなおして、必要なら接着剤で石と台座をくっつけようと思いました。

しばらくして、石が私の元に届きました。 帰ってきたという気さえしました。

お客様自身で、きれいに箱に入れなおしてありました。
大事に可愛がってあるんだなあと思いました。
箱を開けて指輪をちょっと振ってみると、確かにカタカタ少し動いていました。

「それじゃ、固定しなおしやな。どこの爪から開こうか」
「石に傷が付かないようにしなくちゃ」などと思い、 どこから開こうかと石を触っていました。

そうして、ひとつひとつ、リングの爪を開いていきました。
石がカタカタ動くのだから、爪を全部開かなくても、やっているうちに途中で石がぽろっと外れると思っていました。
爪の数は、14個くらいかな、けっこうたくさんあります。
触っているうちに、爪を開いているのに、石が動かなくなっているのに気づき、怪訝に思いました。

石が取れそうになくて、仕方ないので、爪を全部、開きました。
さかさまにして、手のひらに石が落ちてくるように、リングの台座を傾けて振りました。

不思議なことに、そのカイヤナイトは、台座に吸い付くようにぴったりくっついて、びくとも動きませんでした。
指ではがそうとしても、動かず取れないし、隙間に金具を入れようとしても入りませんでした。

「さっきまで、台座の中でカタカタ動いていた石が、台座にこんなにびったりくっついてる・・・・どういうこと・・・?」

(続く)